「誤答を待ちながら」

殺人しない正当性について説かれて
じっと「人」を数えていたら
そいつは気味悪そうに去って行った

偽りのように動機もなく
ひたすらに研ぎ澄ました目で
すぐ隣にあるであろう
最悪の場合を思い描く

「本当なんです」
耳元で何度も繰り返すので無視する
「だけど本当なんです」
黙殺する
もらった問は使い物にならないので捨てた

泡のように舌足らずで
誰のことも知らないでいて
可愛いと思った

彼と私は少しだけ進む
地面で光っていた
釘だと思ったのが硬貨だったので放る
ポケットは未だ空っぽで
駅を出るとひとりだった
私はあのチェックの尻尾に
大好きだったと伝え損ねた

081120

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