「プリズム」

ことばを失くしたあの日
泣いていたのは君だった
ふかいふかい井戸の底に
いくつも歌を溜めながら

祈ってた
まったく救いようのないこと
そしてきっと
うつくしいこと

項垂れて
死んでしまったこころを捨てて
立ち止まる
正しくうねるでこぼこ道で
僕らはことばを
言い尽くして、

胸つぶれるような痛みに
あの日
僕は泣いてやればよかった
ためらうばかりの腕を
そっと回してやればよかった

盲目のまま歩けたなら
まばゆい夜や
つめたい灯に絆されることもなかったと

ほんとはずっと泣きたかった
真冬の海がまたたいていた

目覚め
繁茂する若芽
うたは華やぎ
星は散って
されど
たとえば左の道をゆくなら
神にもなれたかしれないが

息継ぎをしないだけ柔らかくなる
あなたに捧ぐゆめ
汚れても
穢れても
それでもまだ繰り返してゆくと云うのなら

いつか
どこか世界のさいはてで
誰かが不幸と嘆いていても
あの日の夜の外がわで
あなたはずっと笑ってよ

20070827

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